CD-ROM 「映像実験のために」

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  私は1997年の始めに、CD-ROM「映像実験のために」(ユーフォニック社)を発刊した。これは、同名のタイトルの1986年版(青土社)に、それ以来の新しいエッセイ(全体の約1/3)を含めて750頁のテキストと本書の中で扱われている私のフィルムとビデオの作品約60作品の抜粋が、各1〜2分の合計で約110分、それに作品写真とそのダイアグラムなど約100点が加わっている。
  旧版の本は長らく絶版となっていたため、再版を考えていたが、それが CD-ROMという新しいメディアで再版したことは、ほとんど新しい出版といってよいものである。単に新しいエッセイを加えたという以に、CD-ROMというメディアが本とは大変異なるマルチメディアとして機能しているからだ。このノートで、現在の主要な電子出版であるCD-ROMというメディアとマルチメディア・アートの可能性を私の著作にそって考えたい。
 新しいエッセイを加えたことと同時に、このCD-ROMのために、「21世紀への発言」というコラムを全ての章の始めに設けて、自ら顔を映像として出して、発言した。これは、かつてのエッセイを今日の観点から見直して、21世紀という未来への パースペクティブをもって直接読者に語りかけた。目次につけたこのコラムで私は「本でもあると同時に映像でもあります。実際に写真や、映画やビデオなど、私の作品が映像として現われる。しかも、それぞれムービーとして見ることが出来るということは前の本にはなかったことで、私の作品をじかに体験することが出来ます」(1) と語った。ここにこの CD-ROM版の最大の魅力がある。しかも、それがテキストとリンクして参照されるところに、「間(インター)テキスト性」と呼ばれるCD-ROMの独自性がある。それは、テキストとイメージの間ばかりでなく、テキスト相互間、イメージ相互間にもある重層した関係のネットワークである。





CD-ROM Installation meta media
1997年1月27日-31日、ランドマークホール(横浜)




(Photo: Hiroshi Takezawa)




今回新しく制作した CD-ROM「映像実験のために」を中心に、パソコン8台を核とし、ビデオ・モニター40台とプロジェクター4台をインターフェイスとして、イン タラクティブに観客が参加する構成から成る、初のCD-ROMインスタレーションを試みた。文字を読みながら、同時に映像を経験することが可能になり、コンピュータをデスクトップから開放して、環境的な「電脳空間」を展開した。

 会場中央に、観客が参加できる8台のコンピュータによる「島」があり、その周囲 に各8台のビデオモニターによる「島」が4つあって、中央と接続し、その一部はさ らに前面の9メートルの巨大なスクリーンに投影された。このように、観客は中央の コンピュータに参加し, 各ビデオ・モニターの「島」の間をナビゲートした。
 ビデオ・モニターには、60年代の代表的なフィルム作品「LOVE」,「Junkくず」,「 FACE」,「フィルム・メーカーズ」,「SUMMER HAPPENINGUS U.S.A.」などからの抜 粋のシーンが、電光掲示式の1行づつの横文字及縦文字のテキストと共に上映されていた。したがって、60年代の飯村の初期の映像を90年代の テクノロジーで再構成した。東京湾のガラクタや子供たちの環境問題を30年前に捉えた詩的な映像「くず」、女性の性的なプロセスを顔だけで描写した映像「フェイス」、ニューヨークのジョナス ・メカスの若い時の姿などが、コンピュータとビデオの間を徘徊した。(T.I.)