飯村隆彦のNewsletter No.8
■コンラッドとの対談/上映
■ロンドンで個展、LUX CENTRE
■ ロンドンのアート誌に寄稿
■ニュージーランド・フィルム・フェスティバル参加
■カーネギーメロン大学で講演と上映
■ 初めてのDVD制作「OBSEVER/OBSERVED」
■ヨーロッパ・メディア・フェスティバルに出品
■オーバーハウゼン映画祭の68年特集に上映
■デンマークの「デジタル・デイズ」で入選
■スイスのVIPER フェスティバルでも
■「電子出版とマルチメディア・アート」発表
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明滅映画の代表作「フリッカー」(1966年)で有名な作曲家/映像作家、トニー・コンラッドをゲストにアテネ・フランセ(JRお茶の水駅下車徒分7分、Tel(03)
3291 - 4339、但し午後のみ)で、6月19日(金)(18:30 - 20:30)に飯村隆彦と対談/上映「オプティカル/コンセプト・シネマ」(アイ・シネマテークNo.6)
を開催する。「フリッカー」は、最近日本で話題となっている「ポケモン現象」の原型とも言うべき、フリッカー効果を最初に本格的に捉えた作品のひとつで、構造映画の初期の主要作品として数えられる。
飯村は1968年に「Film」誌10月号 に「知覚における実験」というタイトルで、その当時のアメリカの実験映画の新しい流れのひとつとして、「フリッカー」
を紹介。「『フリッカー』は、視覚と聴覚の両域にわたって、感覚の限界までせまり、その不分明を明らかにする果敢な試みである。・・・観客を一種のトランス状態に追いこみ、意識の破壊を通じてそこに新たな知覚の発生を引き起こすことだ。」と書いた。 飯村隆彦の「シャッター」
(1971年)も波のように増幅する光のリズムをもち、さらに「1秒間24コマ」(1975-78
年)は、それを時間のコンセプトとして捉えた作品で、スコット・マクドナルド(映画評論家)は、「時間と空間の実験についても、光と影、視覚と聴覚に関しても、また観客への要求と潜在的な報酬の種類についても、この作品のオリジナル版は飯村
作品の精髄である。」と評した。
また、日本映像学会の郵政省への要請文(日本映像学会報 No.102, 1998年4月1日
発行、日本映像学会事務局 Tel.5995-8287)が示すように、今回の「ポケモン事件」が、科学的な根拠も不確かなまま、
一方的な映像制作規制へと波及している。
今回上映する、30年前の実験映画は今日、貴重な(しかもラジカルな)映像表現の
証言となるものだ。尚、6月16日(火)に名古屋造形芸術大学で、6月17日(水)19:00
〜、京都の京都大学西部講堂(主催:シネマ・ド・オルフェ Tel. 075-761-4298)で同じくトニー・コンラッド
x 飯村隆彦の上映と対談が行われる。
ロンドンに新しくできたメディアセンター、ラックスセンターで30年ぶりの個展がロンドン映画作家協会の主催で9月2日- 9月6日に開かれる。フィルム、ビデオ、インスタレーション、CD-ROMなど、多面にわたる活動を紹介するもので、作品は1960年代から90年代まで、イギリスの観客には初めてのものも少なくない。1970年代には、イギリスの代表的な批評家/作家、マルコム・レグライスによって「エレガントなコンセプト」として作品が高く評価され、近年もロンドンのパンデモニウム・フェスティバルに選ばれるなど注目されてきた。この個展にはグレイトブリテン・ササカワ財団の助成が予定されている。
ロンドンで1996年、11月に開催された芸術会議「周波数:文化、歴史、テクノロジー」に招待されて講演した「飯村隆彦のビデオにおけるアイデンティティ」が主催者の国際視覚芸術協会(inIVA)の発行するアート誌「Anotations」3号に掲載された。写真を含め7頁に及ぶ論文で、ビデオ作品「あいうえおん六面相」と「パフォーマンス:あいうえおん六面相」をめぐって、アイデンティティの問題を論じたもので、作品を分析しながら、その文化的背景に及んでいる。とくにマルチカリチャリズムの視点から、日本語の母音のもつ国際性を映像と音声の面で明らかにした。
オークランド、ウエリントン、デユーンダンなどで巡回して開かれるニュージーランド・フィルム・フェスティバルへの招待が飛び込んできた。7月10日から19日まで、初めてのニュージーランドで、今年、再制作したビデオ「OBSERVER/ OBSERVED」とインスタレーション「あいうえおん六面相」を展示する。これまでまったく作品が上映されていなかっただけに、どのような評価がでるか期待される。
アメリカ東部の講演と上映の大学ツアーで、4月6日、テンプル大学(フィラデルフィア)、4月7日、オルブライト大学(レディング、ペンシルベニア州)、そして最後に、カーネギーメロン大学(ピッツバーグ)で4月9日に行った。昨年、名古屋造形芸大との交換教員展で来日した教授たちがほとんど顔を見せ、新作のビデオとCD-ROMの上映を含む講演に聞き入った。講演後、歓迎パーティが近くの教会を使ったビアホールという異色の場所でもたれ、アメリカ広しと言えども、初めての体験であった。
カナダのバンフにあるバンフ・アートセンターでアーティスト・レジデンスとして3月にビデオ「OBSEVER/
OBSERVED」を再制作、さらに今度は、DVDとして電子出版する企画が同センターの方からもちかけられ、今年8月初旬に再び同センターで制作する。初めてのDVD制作で、CD-ROMの数倍の容量があり、フルスクリーン、フルモーションで、映像、CG、テキスト等がインタラクティブに最構築される。「OBSEVER/OBSERVED」は他に「CAMERA,
MONITOR, FRAME」,「OBSERVER/
OBSERVED/OBSERVER」を含む3部作で、「ビデオの記号学」を作品として1975-76年に創作したもので、それが今回は、DVDで生まれ変わることになる。中でも、ユーフォニック社の岩島民和氏をはじめとする協力により、3次元のCG制作で、ビデオ画面では見られなかった、ビデオ装置の設定と操作を観客が自由に体験することができるようになる。またテキストも新しく書き加えられ、未完成だった「ビデオの記号学」が20年ぶりに新しいシステムで完成される。
ドイツのオスナブリュックで最近ニューメディアに力を入れて注目されているヨーロッパ・メディア・フェスティバルが5月6- 10日、開かれ、新作のCD-ROM「Interactive:AIUEONN Six Features」が選ばれた。このフェスティバル、元はエクスペリメンタル・フィルム・フェスティバルから出発、ビデオを含め、さらにCD-ROMやインスタレーションと広げながら、時代の先端を反映してきた。1993年にはビデオ「あいうえおん六面相」で参加しており、今回はCD-ROMとメディアを変えながら、出品してきた。
短編映画祭として、長い伝統をもつドイツのオーバーハウゼン映画祭(4月23 - 28日)の「1968 - 1998」映画特集に「カメラ・マッサージ」(1968)がドイツやアメリカの実験映画と共に、日本からは唯一選ばれた。この特集は、1968年が単に政治的ばかりにではなく、映画の上でも大きな転換点を意味することを裏づけた。「カメラ・マッサージ」はマーシャル・マクルーハンの「メディアはマッサージ」の言葉を映画化したもので裸の女性をカメラがマッサージすると同時に撮影するカメラがインターカットする。他にナム・ジュン・パイクの「ビデオテープ・スタディ」、ウイルヘルム・ハインの「ロー・フィルム」、ポール・シャリッツの「タッチング」など歴史的な作品が上映された。飯村作品の同映画祭での上映は、1969年、1994年についで3度目。尚、今年、9月7日から20日まで、ニュルンベルグやミュンヘンなどドイツ各地を30年ぶりに「飯村隆彦1960年代、アンダーグランド映画」のプログラムで巡回上映の予定。
コペンハーゲンのデンマーク・フィルム・インスティチュートで開かれた「デジタル・デイズ」(4月23 - 26日)のワークショップにCD-ROM「Interactive: AIUEONN Six Features」が選ばれ、このデジタル専門のフェスティバルで今回のプログラムが大変好評との主催者の報告があった。約2000人の観客が訪れ、フィルム、ビデオを含むデジタル革命に大きな興味が集中した。このCD-ROMもビデオ、インスターレーション、パフォーマンスと多様なアナログからデジタルに至っており、インターラクティブな要素を加えて、新しい展開を見せた。デジタル・ワークには浅井和広氏とタコラ・インターメディアの協力があった。
スイスのルツアーンでフィルム、ビデオ、マルチメディアを対象に開かれたVIPER フェスティバル(5月9-24日)で、CD-ROM「映像実験のために」(ユーフォニック社)がゲスト・キュレーター、キャシー・ハフマンに選ばれ、招待出品された。日本語が750頁(他にムービー2時間、写真100点)もあるが、主催者はアップルから日本語ランゲージ・キットを取りそろえて、オリジナルのまま展示した。このあたり、原典尊重の姿勢が伺える。VIPER も含めヨーロッパのアート系の映画フェスティバルが積極的にビデオやCD-ROMも入れているのに比較して、日本の映画際がCD-ROMはおろか、ビデオも含めないのは時代錯誤といえるだろう。日本の場合、ビデオはハードメーカーの企業系の フェスティバルが多く、アートとしてメディアを超えて見ることのできる映像フェスティバルが望まれる。
最近のマルチメディアはコンピュータのスクリーンにかぎられているが、60年代のマルチメディアは大きな空間とパフォーマンスを含むものだった。60年代以来のメディア・パフォーマンスとエクスパンディド・シネマを含め、さらに、近年のCD-ROMの出版と「meta media」からインターネットを使った作品まで論じた文章「電子出版とマルチメディア・アート」を写真とともに、名古屋造形大学の紀要第4号(1998)に発表した。産業志向のマルチメディア論に欠けているアートの展望を切り開くものである。(希望者は抜き刷りコピーをお送りしますので、送料、200円の切手と宛先明記の封筒を同封して、上記研究所までお申し込み下さい)。